Tomoyasu Yokoyama Computational Materials Scientist's Pages

[技術解説]ペロブスカイト太陽電池とは?

次世代の太陽電池として注目されている「ペロブスカイト太陽電池」について、開発に携わる者として解説したいと思います。

なにがすごいの?

「ペロブスカイト太陽電池」は、ペンキのように塗るだけで発電するため、 「低価格に作れる」「曲げられる」「軽くなる」といったこれまでの太陽電池にはないメリットを有します。

そのため、建物の屋根だけでなく、これまで太陽電池が設置できなかったビルの壁面などが発電エリアになり、「街全体」を発電所に変えることができると期待されています。

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これまでの次世代と言われる太陽電池と大きく異なるのは、初めて太陽電池としての報告がなされてから劇的なスピードで発電性能が向上し、今や市販の太陽電池に匹敵する25%を超える高い変換効率を示す点です。

また、従来の太陽電池より弱い光でも発電性能が高く、曇りや屋内でもよく発電できることや、宇宙線に対する耐性が高く、宇宙用途の太陽電池としても検討されていたりと、これまでの太陽電池にはない特徴が次々と明らかになっており、更なる展開が期待されています。

なぜすごいの?

このようなペロブスカイト太陽電池のメリットの起源は、それに使われる「新素材」にあります。

我々が扱う「素材」は主に「有機材料」と「無機材料」のふたつに分類することができます。 「有機材料」とはペットボトルやプラスチックに使われる素材で、低コストで柔らかいという特徴を持ちます。 「無機材料」は石や金属などで、電気をよく通す、光をよく吸うという特徴を持ちます。

これまでの太陽電池は、後者の「無機材料」から作っていたため、作る際に1000度以上の温度で焼く必要があり、大型の設備が必要でコストが高くなったり、曲げると割れてしまったりしてしまいました。

一方、最近これらを組み合わせた新しい素材「有機–無機ハイブリッド材料」が見出され、有機と無機の両者のメリットを有するというこれまでにない素材としてと注目されています。この新素材を用いた太陽電池が「ペロブスカイト太陽電池」になります。

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これまでの太陽電池材料とは異なり有機材料の特徴も併せ持つため、インクに溶かして塗るだけで太陽電池ができます。 これにより、これまで太陽電池の製造に必要であった高価な装置が入らず、またどんなところにも塗るだけでできるので、フィルムなどの軽くて曲がる基板にも太陽電池を作ることができます。従って「低価格に作れる」「曲げられる」「軽くなる」という特徴が生まれるのです。

私も初めてペロブスカイト太陽電池を作った時は、「こんな簡単に、こんなすぐに太陽電池ができるのか」と、理科の実験をみる小学生のように感動したことを今でも覚えています。こちらの動画のように、黄色い膜が黒色に変化し、有機-無機ハイブリッド材料が瞬時にできます。

このように、有機–無機ハイブリッド材料という新素材を使うことで、ペロブスカイト太陽電池というこれまでにない価値を有する新デバイスを作ることができます。つまり、新素材の発見が、新デバイスの創出につながるのです。小さな素材から社会を大きく変えていける、そんなところに材料科学の魅力があるかなと思います。

最後に補足ですが、「ペロブスカイト」とはこの材料の構造の名前から来ています。ロシアのペロブスキーさんが発見したペロブスカイト型構造という結晶構造があり、この構造を持つ有機–無機ハイブリッド材料が使われているため、「ペロブスカイト太陽電池」と言います。素材の構造的特徴が表現されたネーミングです。