Tomoyasu Yokoyama Computational Materials Scientist's Pages

2025年の読んでおきたいマテリアルズ・インフォマティクス論文5選

2025年もマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の論文紹介をX上で続けることができました。今年も個人的注目論文を今年も5本紹介していきたいと思います。 AIエージェント 2025年、MI分野において急増したのは「AIエージェント」に関する研究でした。 AIエージェントとは、これまでの単なる機械学習モデルではありません。自ら仮説を立て、データベースから必要な情報を収集し、計算・実験ツールを実行して結果を解析、さらにはその考察に基づいて仮説を修正する、という科学的発見のサイクルを自律的に回す能力を持ったAIです。2025年は、「Agentic Science(エージェント科学)」という新たな技術分野が定義され、材料科学においても「AIを使う」時代から「AIが自ら行動する」時代への... Read more

2024年の読んでおきたいマテリアルズ・インフォマティクス論文5選

2024年もマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の論文紹介をぼちぼち続けることができました。毎年恒例の個人的注目論文を今年も5本紹介していきたいと思います。 汎用機械学習ポテンシャル 2024年において最も進展したのは、汎用機械学習ポテンシャルの公開モデルです。こちらのリーダーボードにもあるMACEやSevenNetのような、様々な元素に対応、高精度で、かつ無料、という3拍子揃ったモデルが次々と登場し、誰でも第一原理計算レベルの材料シミュレーションが簡単にできる時代になりました。 機械学習ポテンシャルとは、原子の間に働くエネルギーや原子間力を機械学習により予測する手法です。従来の第一原理計算をはじめとする計算科学的な手法では計算コストが高いという課題を、機械学習で解決しよ... Read more

人生が変わった一本の論文との出会い

最近、私は「多面体に基づいて結晶構造をデザインする」ということに興味があるのですが、今回はなぜそのような研究アプローチに至ったか?について背景にある想いを含め書いてみたいと思います。 先に結論から述べると、本質に立ち戻ることが最近の研究アプローチの根幹にあり、一本の論文に出会うことでそれを実現することができました。 以下ではそれを詳細に説明したいと思います。 偉大な先人たちと戦うためには 数年前、ある開発プロジェクトに参画することになった私は、とにかくイオンが流れやすい固体材料、つまりすごいイオン伝導体を見つけるという開発テーマを担当することになりました。 私の夢は「計算から新しい材料を発見し、エネルギー問題の解決に貢献する」ことなので、イオン伝導体に関しては素人でしたが、自... Read more

2023年の読んでおきたいマテリアルズ・インフォマティクス論文5選

2023年もマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の論文紹介を続けることができました。昨年に引き続き、今年も備忘録のために個人的注目論文を5本書き留めておきます。 大規模結晶材料データベース 2023年に発表された論文の中で最も読んでおくべきと思ったのは、やはりDeepMindさんが計算で38万もの合成可能性の高い材料を予測したものです。 これまでに計算によって熱力学的に安定とされた材料は高々数万件しかなかったのに対し、この論文によって材料データ空間が1桁広がったのはすごいです。 僕はボストンで開催された2023 MRS fall meetingにてこの発表を立ち見で聞いていたのですが、投影された数字を見て「?」となりました。 この論文ではブレークスルー技術が明確にあった... Read more

2022年の読んでおきたいマテリアルズ・インフォマティクス論文5選

マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の分野は毎日数十報もの論文が公開されます。そうした論文を流し見し続けている中で、1ヶ月に1回くらいの頻度で「お!?」となる論文があります。ツイートしているだけだと後から見返すのが大変なので、記録という意味もこめて、個人的注目論文を分野ごとに5本ピックアップしてみました。 機械学習ポテンシャル 2022年の中でMI関連で最も多かったと感じた論文が「機械学習ポテンシャル」関連です。 機械学習ポテンシャルとは、原子の間に働くエネルギーや原子間力を機械学習により予測する手法です。従来の第一原理計算をはじめとする計算科学的な手法では計算コストが高いという課題を、機械学習で解決しようという取り組みです。これにより、これまで時間がかかって難しかった有... Read more