Tomoyasu Yokoyama Computational Materials Scientist's Pages

企業研究者にとって大事だと思うこと Ⅰ

パナソニックの研究所で計算材料科学者として働く私が、これまでの経験から重要だと思うことが3つあります。今回はそのことについて3回に分けて書きたいと思います。 企業研究者にとって大事なことは?その1 企業の研究開発において私が大事だと思うことの一つ目は、「オリジナリティ」、つまり代替不可能な唯一無二の研究者でいることです。 このように考えるようになったのは、こちらの記事にも書いた通り入社して感じた危機感がきっかけでした。 アカデミアの研究者にとってはもちろん大切なことでしたが、最近は企業研究者にとっても重要性が増していると思います。 私のような企業研究者が活躍し続けるためには、技術的優位性、つまりオリジナリティを保有しなければならないと思います。 AIとシミュレーションを組み合わせ... Read more

社会人博士論 Ⅲ ー社会人博士課程進学前に何をすればいいかー

第3回は社会人博士課程への進学を考えている方に向けて、 進学前に私がお勧めしたいことについて書きたいと思います。 社会人博士課程進学前に何をすればいいの? これは人それぞれだと思いますが、私が個人的にお勧めするのは進学したい大学と所属企業の間で共同研究を行うことです。 社会人博士課程の進学の際に、一番の悩みは業務と両立できるのか、 平日の仕事・残業以外の時間で卒業できるほどの研究成果を出せるのか、という点だと思います。 博士課程に進学する前にその大学と共同研究をしておくと、精神的・身体的な負担が圧倒的に少なくなります。 進学前の共同研究によって、いわば博士課程0年生として、リスク少なく研究ができるためです。 私も共同研究がきっかけで、社会人博士課程に進学しました。 私が入社す... Read more

社会人博士論 Ⅱ ーなぜ博士過程に進学したかー

第2回は、どういう考えから私が社会人博士課程に進学するに至ったかについて 書きたいと思います。 なぜ社会人になっても博士課程に進学する必要があるの? 私が博士課程に進学したいと考えた理由は、企業研究者として活躍し続けるためです。 入社してしばらく研究開発に従事しているうちに、今後の自分の研究者人生に危機感を覚えるようになりました。 仮に社外の優秀な研究者が入社してきた場合、このままでは自分は彼らの下位互換になってしまうのではないかと考えたためです。 私が入社した2014年には、社内で材料シミュレーションができる人は数人しかいなかったため、 そのスキルを保有する私は組織の中で貴重な存在として、技術的な優位性がありました。 しかしながら、汎用的なシミュレーションツールが増え、使い... Read more

社会人博士論 Ⅰ ー博士課程と”社会人”博士課程は何が違うかー

私はパナソニックで働きながら2019年に博士課程に進学しました。 今回は社会人博士課程について 私が考えてきたことを3回に分けて書きたいと思います。 第1回は、博士課程に進学するか、民間企業に就職するか悩んでいる方に対し、 私が思う社会人博士課程のメリットについてお話したいと思います。 社会人博士課程のよく言われるメリットとして、自分の働きたい会社に入ってから博士号を取得できる点が挙げられます。 一昔前は博士卒は修士卒より就職が難しいと言われましたが、 現在ではそのような傾向は少なくなってきているように感じます。 弊社でも、研究部門に配属される新入社員のうち博士卒と修士卒が同じくらいの人数の年もありました。 逆に、修士卒の場合は修士までの研究とは全く異なる分野のテーマに配属されるなど... Read more

[技術解説]ペロブスカイト太陽電池とは?

次世代の太陽電池として注目されている「ペロブスカイト太陽電池」について、開発に携わる者として解説したいと思います。 なにがすごいの? 「ペロブスカイト太陽電池」は、ペンキのように塗るだけで発電するため、 「低価格に作れる」「曲げられる」「軽くなる」といったこれまでの太陽電池にはないメリットを有します。 そのため、建物の屋根だけでなく、これまで太陽電池が設置できなかったビルの壁面などが発電エリアになり、「街全体」を発電所に変えることができると期待されています。 これまでの次世代と言われる太陽電池と大きく異なるのは、初めて太陽電池としての報告がなされてから劇的なスピードで発電性能が向上し、今や市販の太陽電池に匹敵する25%を超える高い変換効率を示す点です。 また、従来の太陽電... Read more